生きるのが面倒くさい人 回避性パーソナリティ障害

岡田尊司さんの著書「生きるのが面倒くさい人 回避性パーソナリティ障害」を読みました。


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うちのツレがこの「回避性パーソナリティ障害」の症状ドンピシャで、何かの参考になるかと思い、前々からずっと読んでみたいと思っていたのですが、今回ようやく読むことができました。

さて、まず読み終わって一番に感じたことは、一口に「回避性パーソナリティ障害の人」と言っても、2種類に分けて語る必要があるということ。

  • やろうと思えば出来る回避性パーソナリティ障害の人
  • やろうと思っても出来ない回避性パーソナリティ障害の人

上記はどちらも同じ「回避性パーソナリティ障害」であり、一見するとそれほど違いはなさそうにも見えますが、なかなかどうして、実際には天と地ほどの違いがあります。

そしてこの本は、前者の「やろうと思えば出来る回避性パーソナリティ障害の人」向けに書かれた本です。

「やろうと思えば出来る回避性パーソナリティ障害の人」とは、社会を生きてゆく上での能力が平均以上、もしくは突出した才能のある人のことです。
実際には社会を生きてゆく能力を持ち合わせているにもかかわらず、生育環境等の様々な要因により回避的な生き方をしてしまっている人がこれにあたり、そういう人にとっては、この本はとても為になることが書かれているのかもしれません。

ただし、上で挙げた2種類の人のうち、後者の「やろうと思っても出来ない回避性パーソナリティ障害の人」、つまり上記の生育環境等の要因に加え、そもそも社会を生きてゆくうえでの能力自体に乏しく、これまで何をやっても失敗してばかりだったという「事実」に基づいた自己肯定感の低さから回避的な生き方をしてしまっている人にとっては、この本は少々毒となるかも知れません。

この本には、著者を含め、その他様々な著名人や一般の方などが「回避性パーソナリティ障害」からいかにして寛解していったかの事例が多く記されていますが、それらがどれも「やろうと思えば出来る回避性パーソナリティ障害の人」の事例ばかりのため、それはそういう人が読めば勇気のわく内容なのかもしれませんが、これを「やろうと思っても出来ない回避性パーソナリティ障害の人」が読んだところで、それらの事例の人たちと自分自身を重ねることなど出来るわけもなく、ただただ劣等感が増幅されるだけの結果にもなりかねません。

ここまで書けばもうお気づきかとは思いますが、かく言ううちのツレも「やろうと思っても出来ない回避性パーソナリティ障害の人」に該当します。
詳しい話はツレが嫌がるのでここでは書きませんが、ツレはこれまでの人生で様々な挫折を味わってきており、その姿をずっと横で見てきた僕としては、その苦悩についてもよく理解しているつもりです。

もちろん「やろうと思えば出来る回避性パーソナリティ障害の人」の苦悩もそれは大変なものなのだろうとは思いますが、「やろうと思っても出来ない回避性パーソナリティ障害の人」の苦悩はそれに輪をかけて辛いものです。
にもかかわらず、この本ではそういった人たちの存在やその辛さについては全く言及がなされていないため、「回避性パーソナリティ障害」という名目につられてこの本を手に取った当事者(やその身内)からすると、少々的が外れている印象を受けてしまうのは致し方ないところかと思います。

とはいえ、後半の「回避性の人とうまく付き合う方法」や「回避性の人にとっての適職とは」のあたりの項などは大変興味深いものがありますし、そもそも著者の岡田尊司さんは作家でもあるようで、読み物として面白く読める点なども考慮すると、一読の価値は十分にある本だと思いますので、気になった方は一度お手に取られてみてはいかがでしょうか。

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